町波

町が歩いてくる 私の元へ
あの電信柱は頭をたたき 脛をねらう
あの生け垣は 何もかもを うやむやに
そして あの窓からは嘲りが飛び出し
プールに寄れば 澱んだ車が泳いでる
黒いチューブはあまねく町内をはしり
あまねく人々の唾棄物を運び 
餓鬼達の無垢な憎しみを精製し
孤独な老人の寂寥を錬磨し
どこかへと巡っていく
ふりをして 遠ざかっていく
繁茂する緑の手入れに余念なき爺は
意外にも 調教師の風体
さあ平泳ぎでフェラーリが飛んできた
事故だ! 事故か? 事故じゃない------
ビニール袋の被害者が
もみもみされてふっとんでる
誰がみる そんなものを
ガサツな音で不燃無念の無生物は
風につれていかれた
ああそれがいいよ 空には車がないからね
ただ気をつけな そっちには町がいる