「ジャック!生きてたか!」
軍曹は見知った顔にでくわした。
「軍曹殿、ご無事でしたか!」
彼は足を骨折していたが、6つの足のうち中間
の足が折れていたので、日常生活に支障はない
らしい。ジャックはハンス率いるバスター・ビ
ー小隊の先任伍長であって、ハンスのサポート
をしてくれる良きパートナーであった。
「他の小隊メンバーはどうしたんだ?」
ハンスは凶報を覚悟で訊いてみた。ジャックは
人なつっこい顔を渋面にした。それだけでほぼ
わかる。
「軍曹、申し訳ありません。自分は」
「いや、お前はよくやってくれた。おれもレイ
ミーを見殺しにしてしまったからな」
この責任感の強い伍長蜂をこれ以上落ち込ませ
てはなるまいと、ハンスは出来る限り彼を元気
づけた。
「実はハンス軍曹、話があります」とマホガニ
ー。
「なんですか」
「実は近々、ア熊の本拠地を叩く作戦を上層部
は練っているそうなのです」
「なんだって」
あの黄色い巨体が瞼の裏によみがえる。ハチミ
ツのためだけに無辜の民蜂(たみばち)を殺す
鬼畜熊。
「実はあなた方第3プロポリスの他にも、第2
、第12プロポリスも壊滅したとの情報が入っ
てきているのです」
なんてことだ。ハンスは横のハチミツ製デスク
を叩きたい衝動に駆られた。
「ここ第7プロポリスとて例外ではないでしょ
う。この瞬間にも奴が迫ってきているはずです

「・・・・」
ハンスとジャックはだまりこんだ。そして母の
キャサリンのこと思い出していた。第30プロ
ポリス(つまりハンスの故郷)を出てから、も
う1年。母は無事だろうか。あのプーにやられ
てはいないだろうか。
ハンスが望郷の念に浸っているときに天井の伝
声管から声が聞こえてきた。
「500M先に黄色い二足歩行ほ乳類補足!総
員第一戦闘配備!総員第一戦闘配備!」
「まさか・・・!」
あの鬼畜がこんなにも早くやってくるなんて

「お二人は休んでいてください。私はこれか
らでる負傷者対策のために準備を・・・」
「待ってください」
ハンスはマホガニーを引き留めた。
「おれもいきます」

つづく