富獄の降らしたきゃんでえ

悠久むかしの爆撃機
飛んでいいのは紙の上だけ 酷なもの
そのプロペラも 機銃も 燃料も 
無人のコクピットも
前輪 尾翼も
旋回のち撃ち太陽の下溜め込み
スーサイドの如くに滑り
風をつっきっていられるのは
ひとえに技術屋さんのペンのおかげ
大空青空 とんでゆけ
排煙と黒煙をまきちらし
一トン爆弾ぶらさげて
ずんどう晒してとんでゆけ
目標の上空で見下ろせば
豆とも称せぬ獄抄の点たち
ひろろん ひろろん
投下されたよ きゃんでえは
数千数万居並ぶ家屋にまっしぐら
我が物顔でおちてゆく
ひろろん あっつい午後のことである
ひろろん 殺しはいっつもあっつい日
空を見上げた人々は 
太陽をかどわかす ひこーきを みつける
アメがふってくる
わーにげろぅ カラフルな放射能
焼けてしまう 甘い糖の誘惑によって
惑う人々に容赦なく降り注ぐ
メロン味 イチゴ味 ハッカ味 パイン味・・・
様々な殺意が青空で塊となり
地に着くころには散り散りとなり
さあ虐殺のはじまりだ
舌で転がる自由すらなく アメたちは
どんどんと殺してゆく
渋面の商社勤めを 虐待の腕を 平和の誓いを
壁なんて問題ではない
そこに人いれば必ずベトベトにしてやるのだ
けれども富獄には聞こえないでも見えている
怒号 怨嗟 悲嘆 叫喚
一切合切引け受けて 飛ぶ富獄
もうあいつらは死に体だ
ありがとう 富獄
君の勇姿は忘れない
例え紙の上のいくさでも
みんなみんな知っている
富獄の殺傷力は世界一
嗚呼プロペラの快音の似合いな
入道雲だなあ